LOOPLACE stock and renovation

&PLACE特集「おもしろい場をつくる」

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再生レポート

原宿の商業ビルをリブランディング 建物それぞれの個性を生かしながら、ビルの統一性を演出し、課題を解決



 株式会社LOOPLACEは、いちご地所株式会社様が所有する築古ビルの改修工事を実施。「dot.(ドット)」シリーズとしてリブランディングを行いました。

人とのつながりこそが「心築」の醍醐味

 いちご地所は、いちごグループの不動産部門として2005年11月に設立しました。同社の主事業が「心築」です。既存物件の持ち味を最大限に生かすことで、スクラップ&ビルドに頼らない、サステナブル時代の新たな不動産の可能性を提案しています。
 コロナ禍で叫ばれていたのがコミュニケーションの希薄化。この潮流も背景に、心築事業では2022年12月に新しくオフィスビルブランドの「village」シリーズの展開をスタート。第一弾として、東京・門前仲町に所有するビルを「Tokyo Monnaka Village」へとリニューアルしています。同シリーズではソフト面の取り組みも大切にし、テナントを対象としたイベント「Meet The Neighbors!」の企画を通じて、入居者間の交流促進にも寄与してきました。


プロジェクトを担当した、いちご地所 心築運用部兼心築ホテル運用部の及川流依氏(左)、LOOPLACE 建築マネジメント事業部の王爍氏


 LOOPLACEとの協業による店舗ビルのリノベーションは、同社にとって初の試み。リニューアルの対象となったのはいちご地所が原宿通り(キャットストリート)に所有する4棟の商業ビルです。
 2010年代半ば~2020年代初頭にかけて取得した4棟のビルは、これまでもキャットストリートの賑わい創出に貢献してきました。一方で、キャットストリートに点在している強みを生かすことなく、それぞれ単独で運用されていたことも事実。これらの運用を見直すべく考えたのが、新しいビルブランドの立ち上げです。

新ブランド「dot.」始動

 4棟を連携させるために、いちご地所がまず考えたのはブランディングとそれに伴うビルのリニューアル工事です。新しいブランド名は「dot.(ドット)」としました。
 ブランドコンセプトは「店舗とまちの発展をつなぐ1つの建物」。「dot.」ではビルを「点」(=個性)と仮定し、「点」(各物件)のつながりによって「線」ができることで新しい往来が生まれ、その集合体が賑わいをもたらしたいとの思いが込められています。  元々は「village」としてリニューアルすることを想定していましたが、裏原宿という独特なエリアでまとまった改修を行うにあたり、独自ブランドとしての挑戦に舵を切りました。

「dot.」新たなブランドコンセプトの具現化と統一性へのこだわり

 プロジェクトテーマとして、それぞれのビルの個性を保ちながら、新ブランドコンセプトの具現化と、商業ビルとしてのテナント認知度向上、賑わいの創出、加えてかねてから課題となっていた老朽化対策や治安維持対策等が求められました。

新ロゴデザイン/コミュニティの繋がりから着想を得て、
親やすく柔らかい印象を与える曲線を利用したデザイン。
親しみやすさと安心感を与え、幅広い年齢層に訴求するデザインを提案。
太い線幅で力強さを表現しています。



それぞれのビルの個性に合わせてリニューアルされた新ブランドロゴサイン



ビルサインから、注意喚起サイン、自動販売機に至るまで、
全体的な統一感を意識しグラフィックやサイン造作で展開している。


 LOOPLACEのデザインチームは、リニューアルを通じて4棟のビルそれぞれの個性を活かしながら、ひとつのブランドとしてまとめるべく、バリューアップ工事を進めました。そのひとつにビルサインの更新があります。
 「いちご原宿通りビル」と「守谷ビル」、「RISA」「神宮前426ビル」の看板サインには、ビルの新名称である「dot.harajuku」に更新。ビルの外観にマッチするようにそれぞれ異なるデザインを施しつつ、ブランドロゴを明示しています。


各物件の個性を活かしながらテナントビルのサイン掲示も整理した館名サイン


また課題になっていたサインの視認性向上や周辺環境整備もあわせて着手。人とまちをつなげるデザインとビルとしての統一性と視認性の向上をはかりました。


新たに設置した「守谷ビル」のテナントサイン。
暗くなると自動で点灯し、中空階フロアのテナント認知向上も狙う。



かねてから外灯で看板が見えにくかったテナントサイン。
今回工事で外灯を撤去し視認性を向上。



車止めにも、「dot.」のイメージキャラクターである猫を装飾。
遊び心と原宿らしさを表現しながら、環境整備も兼ねている。


「神宮前426ビル」と「RISA」では既存の自動販売機のデザインもリニューアル。コンセプトに沿うよう、ビビッドカラーが際立つドット柄でラッピングしました。自動販売機という機能だけでなく、店舗ビルとの統一性や、場の賑わいを生むアイコンのひとつとしてとらえ、人が集まるしかけのひとつとしています。こうした戦略が功を奏し、「RISA」は「映えるスポット」として道行く人がビルの前に立ち止まるようになっています。


コカ・コーラボトラーズジャパンと連携し、コカ・コーラのイメージカラーである赤と「dot.」の模様を掛け合わせたオリジナルデザインを施した自動販売機。ここを背景に撮影する人の姿もみられるという。



地面にも自動販売機と同色のドット柄をペイントし、
より一体感のある表現を目指した。



若者の街ならではの治安維持対策

 原宿での築古ビルの改修にあたり、ある課題を解決する必要がありました。治安面です。駅前や竹下通り、キャットストリートなどの道路へのごみ捨てや落書きは、かねてより多くの周辺事業者を悩ませていました。



 そこで「dot.」では、それぞれのビルで防犯面を対策。目指したのが「夜間でも安心して利用できるビル」です。例えば「神宮前426ビル」。テナント看板の脇から路地に続く道は、メインストリートと打って変わって人通りの少ない場所です。来街者にとって、夜間の通り抜けには抵抗感があります。人通りが少ないことから、これまではたばこのポイ捨てや自動販売機への落書きも一層目立っていました。
 こうした立地面でのウィークポイントを克服するために、敷地内環境のリニューアルも図りました。路地に続く脇道の入り口にはLED照明のネオン管を設置。明るい雰囲気を演出しました。アルミのフレームをドット模様とする遊び心も忘れません。


通抜け通路の入り口に設置されたネオンサインと改修後の通路。
路上喫煙や、落書きを一掃し、あかるく人を誘導するしかけで、開かれた通路へ再生。



入口サインと連動するデザインを施した自動販売機。
自動販売機へのラッピングは、実はたばこのポイ捨て防止にも貢献している。



人通りのない路地側の敷地内では、喫煙や座り込みなどが散見されていました。
改修に合わせて、敷地内に喫煙、飲食などの注意喚起を掲出。
デザイン的にもコンセプトに合わせた統一を図っている。


ビルの景観を保つためには、外観を清潔な状態に維持することも不可欠。一方で管理業界の人手不足が問題となる昨今、多くの人々が行き交う商業地では特に、景観の維持は決して簡単なことではありません。景観を損なうような注意書きを設置するのではなく、全体的なデザインの統一感を図りながら、抑制することも今回のリブランディングで配慮していることのひとつです。
 リニューアルを経て、らくがき行為やポイ捨ては激減したといいます。

店舗仕様のための階段設置工事を実施

今回、用途の変更で生じる動線のリニューアル工事にも着手しました。「守谷ビル」はもともと最上階が住宅フロアでしたが、退去に伴い、いちご地所は最上階への商業店舗の誘致を決めます。
 従前は居住者と店舗利用者の動線を分けるため、ビル前面道路から直接アクセスできる階段は2階までしかありませんでした。今回、3階店舗誘致のため、2階から3階の外部階段を新設し延長。確認申請を行う工事ですが、3階店舗利用者の利便性向上へ向けて設置工事に踏み切りました。


2階テナントの営業を止めずに延長された階段。人通りがありながらの工事は難易度が高かったものの、工場であらかじめ完成させ設置する工法を採用し、現地での工事時間短縮しつつ行った。



既存の資産を生かした付加価値提供を重視

 環境配慮や建築資材の高騰などを背景に、昨今は既存物件の利活用の必要性が叫ばれています。事業者から特に求められるのは、単なるハードの更新にとどまらない、エリアや物件の特性にマッチした付加価値の創出です。
 例えば若者向けの商業地においては、おしゃれで最先端な雰囲気づくりは重要なポイント。今回、既存の資産をできるだけ生かしながら街の景観に溶け込むリノベーションを心がけたことで、テナントの魅力を最大限に引き出すことができる競争力の高いビルへと変貌させることができました。



 より地域に根差したビル運営を目指して、及川氏は今後、「Village」シリーズで行っている「Meet The Neighbors!」を「dot.」シリーズでも開催したいと言います。「テナントごとに営業時間が異なり開催時間の調整が難しい」という課題は残りますが、原宿という立地性をフル活用した個性的な企画が期待されます。

 「リニューアルしたことで、サイン回りなどがきれいになったとテナント様からお褒めの言葉をいただきました。当社が原宿に保有するビルには、日本初出店を目指す海外ブランドからのお引き合いもあります。原宿らしさを取り入れながら、誰もが気持ちよく利用できるビルの運用を進めていきたいと思います」(及川氏)。


 新たな試みとして「dot.」シリーズ初のポップアップスペース出店を募集することが決定。人気の原宿で出店したくてもハードルが高いと考えるテナントに向けて「チャレンジできる場所」「インキュベーションとしての場所」として、また、既存テナントに向けては「テナント交流会(ミートザネイバー)の場所」として活用されます。

「築古の物件ではなかなか実現が難しかったのですが、今回リブランディングをしたことで新しい「心築」が実現できました。今後も既存の資産である物件を生かし、テナント様やそのお客様、地域に向けて付加価値を提供していきたいと思います」(及川氏)。

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 LOOPLACEでは中小ビルのバリューアップにつながる設計施工と、そのノウハウを生かした収益不動産シリーズ「gran+」を展開しています。取得から設計・施工・リーシングまでオフィスビルのトータルコーディネートを行うことで、お客様の満足度を高めつつ、収益性の高いオフィスの創造を実現してきました。今後も同社では、中小ビルに新しい価値をつける提案を進めていきます。


●建物概要

①「dot.harajuku|2」(旧:神宮前426ビル)
所在地:東京都渋谷区神宮前4-26-5
規模:地上3階

②「dot.harajuku|3」(旧:いちご原宿通りビル)
所在地:東京都渋谷区神宮前4-27-6
規模:地上3階地下1階

③「dot.harajuku|4」(旧:RISA)
所在地:東京都渋谷区神宮前4-25-1
規模:地上2階地下1階

④「dot.harajuku|5」(旧:守谷ビル)
所在地::東京都渋谷区神宮前4-26-1
規模:地上3階

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