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&PLACE特集「おもしろい場をつくる」

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対談・トーク

築古ビルの可能性の見立てかた─株式会社リアルゲイト代表・岩本裕氏を迎えて

株式会社リアルゲイトは、築古ビル再生の可能性にいち早く着目し、話題性に富む場づくりを実践している業界のトップランナーでもあります。今回、同社と株式会社LOOPLACEは、渋谷区富ヶ谷の築古ビル再生事業でのコラボレーションが実現。
株式会社リアルゲイトの岩本裕社長と株式会社LOOPLACE代表の飯田泰敬の対談をお送りいたします。

「おもしろい場所」をつくっていく、おもしろさ

──不動産再生事業のリーディングカンパニーとして、存在感を高め続けているリアルゲイト。現在、都内を中心に約50棟の物件を手がけるなど、着実に事業規模を拡大されています。岩本さんが築古ビルの可能性に着目し、利活用ビジネスに取り組みはじめた経緯・背景を教えていただけますか?

岩本:大学は建築学科に入学しましたが、学生時代はアメリカンフットボールしかしていませんでした。就職先もアメフト部があったゼネコンに誘われるがまま、平日は現場監督として働いて、夜や週末は練習に明け暮れていましたね。

自分としてはうまく両立していたつもりでしたが、選手としても仕事の質も中途半端なまま終わってしまうような気がして、27歳のときにマンションデベロッパーに転職しました。土地を仕入れ、プロジェクトを企画し、しっかり利益を出す──いまやっているビジネスの基盤は、このとき全部経験させてもらいました。

岩本:その後、リーマンショックが起きて、会社が債務超過に転落したことが独立のきっかけになりました。

飯田:といいますと?

岩本:当時、担当していたSOHOビル「the SOHO」(お台場)の運営を、建物を引き取った施工会社からまかせてもらうことになり、社員2人で事業をスタートさせたのがリアルゲイトの始まりです。

飯田:私が感じている岩本さんの強みは、卓越した不動産の目利きにあると思っていますが、建物の運営から事業をスタートしたのもいまにつながっているんじゃないですか?

岩本:いいえ、そんなことはないですね。当初はとにかくお金がありませんでした。私たちは安いものを安く借りて価値を出すしかない。となると借りられる物件は「小さくて古いけれど価値はある、かもしれない」というところしかありません(笑)。いやおうなしに目利きの力は身についていきましたね。

──いまのビジネスモデルが生まれた理由が、“それしかなかったから”というのがユニークですね。

飯田:私も街を歩きながら、「この立地にこの大きさだったら…」と脳内で電卓をたたくようになり、意識的に建物の価値を見定めるようになりました。私たちがターゲットとしている築30年超のビルってまだまだ市場に残っていますよね。

岩本:オフィスビルがユニークなのは、相場が築年数によって決まらないところにあります。マンションの場合、賃料相場が築年数に応じて左右されるケースが多いんです。

でもオフィスは違います。外観や共用部のデザイン性、自由度の高い専有部などによって差別化を図り、新築ビルのオフィスと同等の賃料で貸し出すことができます。また入居している会社の価値が、そのままその物件やエリアの価値になるのが、オフィスビルを手掛ける魅力だと思います。

飯田:同感です。その物件出身のスタートアップが、世の中に爪あとを残すような革新的なサービスを生み出したら、その会社だけでなく建物にも価値が加わります。そういったところもLOOPLACEが中小規模のクリエイティブ企業に特化してビジネスを展開している理由の一つです。

入居者が気持ちよく働けて、会社の業績が伸びることが第一義

──2020年、リアルゲイトとLOOPLACEは、東京都渋谷区の富ヶ谷で共同プロジェクトをスタートさせました。両社それぞれの役割を整理していただいてもよいですか?

飯田:LOOPLACEが物件オーナーとして取得したオフィスビルの、詳細設計とテナントリーシングをリアルゲイトさんにお願いしています。施工はうちが担当です。延床面積200坪ほどとそんなに大きい物件ではありませんが、地上4階・地下1階という規模感と富ヶ谷の立地を活かした面白い物件です。

岩本:ここのことを知ったのは忘れもしない2019年8月のこと。偶然現場の前を通ったらLOOPLACEさんの張り紙があって、その場ですぐに電話しました。「売ってるの? 貸してるの?」と(笑)。

飯田:私たちとしては、いい物件が手に入ったのはいいけれど、具体的な設計や活用方法のプランニングは手つかずの状態で。岩本さんの存在は知っていましたし、いつか一緒にビジネスができたらうれしいなと思っていた矢先に、本人から直接携帯にかかってきてホント驚きました。

岩本:リアルゲイトとしても、2019年から「オーダーメイドビルディング賃貸事業」を加速させていたところだったので、この物件はドンピシャでしたね。

──リアルゲイトの「オーダーメイドビルディング賃貸事業」について、あらためて説明していただけますか?

岩本:小規模の築古ビルをリアルゲイトが借り上げて、一定の工事を行った後にクリエイティブオフィスとしてスタートアップに賃貸する事業です。この「一定の工事」というのがポイントです。

岩本:自分たちのオリジナリティを出したいけれど予算がない、という会社はたくさんあります。そこでオフィス環境に最低限必要な電気・空調などの設備工事を私たちが手がけて、テナント企業の希望を聞きながら外観や内装、共用部分の改修を進めます。

──コストをおさえながらテナントの自由度を実現することで、オーナーサイドの手間とリスクも軽減できるわけですね。

岩本:築古ビルに価値を見つけ、自由にカスタマイズをしたいという層は一定数います。そうしたニーズを汲み取っていくのが、私たちのミッションです。

飯田:スタートアップ企業の場合、シェアオフィスに入居することが他社との差別化になっている風潮がありますが、シェアオフィスが一般的になってきた昨今、カウンターカルチャーとして「やっぱり自分たちの城を!」という機運が高まっているようにも思います。

LOOPLACEとしても当初富ヶ谷の現場は、共有部分や内装を入居前に完成させるセットアップオフィスとして収支計画を組んでいたため、リアルゲイトさんにオーダーメイドオフィスの提案をしていただいて新境地が開かれた気分でした。

岩本:そう。ビタッとハマりましたね。私たちがこだわっているつくって終わりじゃないビジネスの継続性と、入居者同士のコミュニケーションを不要に押し付けないという点も、物件を通して理想形が見えましたし。

──クリエイティブ層がひとつ屋根の下に集まるわけですから、そこにコミュニケーションが生まれるのは必然のような気がしますが…。

岩本:もちろん自然発生的なものはウェルカムですが、館の人間が起業家イベントや交流会などを主催するような、なかば強制的な仕組みをつくってしまうと、オフィスとしての本来の意義とずれる気がします。

飯田:なるほど! そこはあくまでオフィス。ビジネスをする場所ですものね。

岩本:入居する方が気持ちよく働けて、会社の業績が伸びるのが第一義だと思うんです。スタートアップ企業の場合、順調に成長していくと2年ぐらいで部屋のサイズが変わります。人が集まり、ものが増え、手狭になったら新しい場所を探しますよね。そうした流れを俯瞰して、その会社にとってベストの“次”を提案できるのは、オフィスビルを1棟丸ごと運営している私たちしかいないんです。

飯田:リアルゲイトさんが手がけている物件って、「もともと○○として使われてたところ」みたいなストーリー性が入居者さんたちに刺さっていますよね。それが物件の個性、他とは違う差別化ポイントとして価値を高めてきたように思います。

岩本:私たちは物件をオーナーさんからお借りしています。大手ではなく私たちを選んで貸してくださる理由はお金だけじゃない。場所の成り立ちや物件の歴史を理解して、「そこにある」というアイデンティティを大切にした上で価値を付与するからです。『ビル名に「ペガサス」ってのは絶対に残しておいてほしい』とか、オーナーさんの想いには最大限寄り添いますよ。

──それが差別化であり、収益化のポイントだということですね。

岩本:「リアルゲイトはものづくりだけで終わる仕事はやりません。」いいものというのは、お金を払っていいデザイナーさんにお願いすれば形になるかもしれませんが、入居者が途切れず、ちゃんと収益が出るかどうかとは別の話です。そこはオーナーさんと入居者さんに真正面から向き合い、両者の声を聞いている私たちにしかできないことだと思っています。

輝く宝の原石を見つけてきて、ひたすら磨く

──これからやっていきたいことをお聞かせください。

岩本:建物だけで終わらない、街づくりをしていきたいですね。私たちは鉄道を通すことはできないけれど、個性的な建物が集合してできる面白い街づくりならできる。

飯田:人が街をつくっていく流れ、ですよね。

岩本:駅から離れたところは地価が低いため、倉庫や印刷会社などが集まってそこに出入りするアパレル業者やクリエイティブ層が増えていき、その人たちが新しい街の空気をつくっていく
――そんな街づくりの一端を担えたらうれしいです。

飯田:岩本さんは日頃からインプット、そしてアウトプットを続けてこられていますよね。裏通りを歩いて物件を見れば、賃料設定を瞬時に計算できるような…。不動産再生という視点でそういうことができる人や会社は日本にまだまだ少ないと思うので、そうした姿をぜひ見習っていきたいです。

岩本:私たちのビジネスって、ヴィンテージの家具屋さんに似ています。ボロボロの家具を見つけてきて、独自の技術で磨くと価値が再び生まれて高値で売れる。服もそうですよね。

飯田:なるほど!

岩本:新しいイノベーションが生まれるエリアに、クリエイティブな層が好むセンスのいい企画やデザインリノベーションをして、自由度の高い貸し方をすれば利益が生まれます。その結果、街やそこから生まれる新しいビジネスの活性化につながるような好サイクルを実現していきたいです。

飯田:築25年から30年という築古ビルが市場に残されている中で、建物を壊さず、価値を高め、次の世代に受け渡していくことを事業として成立させるには、1社だけでは難しいと思うんです。ぜひお互いのシナジーを活かして、世の中に面白くて価値のある場所を数多く生み出せればと思います。ありがとうございました!

対談場所:リアルゲイト本社および、富ヶ谷共同プロジェクト現場にて
株式会社リアルゲイト
代表取締役/岩本 裕(いわもと・ゆたか)
株式会社リアルゲイト 代表取締役/岩本 裕(いわもと・ゆたか)

一級建築士
東京都市大学(旧武蔵工業大学)工学部建築学科卒業。大手ゼネコンで、主にマンション工事の現場監督とアメフト選手として活動、その後大手マンションデベロッパーと新興デベロッパーにて土地の仕入れから企画販売を一貫して経験。2009年8月、「the SOHO」の運営を機に当社設立。代表取締役就任、現在に至る。趣味は週4日のウエイトトレーニング。

株式会社リアルゲイト・公式ウェブサイト
株式会社LOOPLACE
代表取締役/飯田 泰敬(いいだ・やすたか)
株式会社LOOPLACE 代表取締役/飯田 泰敬(いいだ・やすたか)

一級建築施工管理技士
北海道函館出身。21歳で専門工事業者として独立、1998年に当社の前身である有限会社成和工業を設立、後に株式会社成和へ商号変更。大手ゼネコンや店舗内装などの下請け工事業を経験し、2008年にデザイン設計業務へと幅を広げ、2016年に不動産再生事業へ参入。gran+(グランプラス)シリーズの販売を開始し、2020年1月株式会社LOOPLACEへと商号変更、代表取締役として現在に至る。自宅にも作るほどのサウナ好き。



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